ライフデザイン企業となるために、お客さまの暮らしに役立つために、KDDIは今、金融の世界でも着々と地歩を固めつつある。例えば、『auのほけん・ローン』。通信会社が幅広い金融商品を提供するというこの革新的なサービスも、中途入社者たちが主体となって立ち上げたものである。前例なきサービスの実現に挑んでいったメンバーたちの想いとは…。視点の先にある未来とは…。

前途多難な幕開け。

「やるしかない。だがしかし、本当にローンチできるのだろうか」。2015年9月、ネット証券からKDDIに転身した藤田隆は、目の前に横たわるクリティカルな任務に身震いをした。藤田がアサインされたのは、金融ビジネス統括部がヘッドを務める「金融ホワイトレーベルプロジェクト」。
KDDIではそれ以前、他の金融機関と共同で「じぶん銀行」や「au損保」というグループ会社を立ち上げていた。また、「ライフネット生命」の主要株主ともなっていたのだが、関係3社はそれぞれ独自に事業を行っている状態で、KDDIグループとしての一体感を創出できてはいなかった。そこで3社の生保・損保・ローンをauの冠のもとに提供し、auユーザーならではのメリットも付加することで、お客さま体験価値の向上を図るというのが金融ホワイトレーベルプロジェクトの趣旨である。なお、金融商品への申し込みは、主にスマートフォンやPCを介して受け付けることが決まっており、企画側の一員としてシステム全体の設計を主導するのが藤田に課されたミッションだった。
だが、通信キャリアがここまで大掛かりに金融サービスを行った例はない。「サービス内容も業務の仕組みも入念な検討が繰り返されたため、すべての要件が流動的で、通常の手順に沿ったシステム設計は不可能だったのです」。

情報提供のあるべき形とは…

困難な案件には、頼れるPMO(プロジェクト マネジメント オフィス)がほしい。藤田は社内のシステムマネジメントグループからリーダーの菊池浩隆と柳亮弥らをメンバーに招き入れると、関係会社も含めたワーキンググループを組成して、一気呵成に事を進める体制を整えた。この時すでに、『auのほけん・ローン』の取り扱い開始日は、翌2016年4月5日と定まっていた。与えられた期間は約半年。金融案件としては相当に短期だが、高品質なシステムを完成させなければならない。
菊池たちが今回構築すべきシステムは、KDDIおよび関係3社の既存システムと連携し、金融商品への申し込み窓口などをauのサイトに統合するものだ。「ですが、生保・損保・ローンはそれぞれに申し込み手続きが複雑です。それをどうやって分かり易く伝えるか。UIやUXの設計が大きなテーマとなりました」。
これを受けて柳が取った行動は、auショップでの勤務経験を持つ社員に協力を仰ぎつつ、商品説明の流れを精査すること。「私たちは当初、サイトと併せてauショップでの説明も検討していたのですが…。皆でロールプレイングをする中で、ショップでのご案内には多くの時間がかかってしまい、人員の面からも今は現実的でないと判明。しかし、サイトだけでは、さまざまなご質問や相談にお応えしきれないため、金融専門のコールセンターを立ち上げることになったのです」。システムの視点だけでなく、お客さまの目線に立って情報提供のあるべき形を探求したことが、新たなるサポート体制の確立に結びついたのだ。

本音でぶつかり、未知を愉しむ。

こうしてシステム部隊が開発フェーズに入った2016年1月、残されたリーガル面の課題に対処するべくプロジェクトに加わったのが田中健二だ。「『auのほけん・ローン』では、KDDIと関係会社がお客さまの個人情報を相互に利用することがあります。そのプライバシーポリシーを取りまとめるのが私の役割でした」。
個人情報の保護に関する金融関連の法令は、他の業種よりも厳格だ。さらに関係3社では、法律以上に厳しい自主ルールが設けられていた。それらを把握したうえで、各社との調整を行いながらプライバシーポリシーを取りまとめ、社内の法務部などへの説明を行って、承認を取り付けていく。神経を使う任務である。一方、金融システムでトラブルが生じれば信用問題になりかねない。セキュリティ対策も、リーガル対応に関しても、期限ギリギリまで懸命の作業が繰り広げられた末、『auのほけん・ローン』は無事にリリースされたのだ。
中途入社者たちがキーマンとなって遂行されたこの案件。菊池によれば、「私たちシステム側は金融について分からないことばかりでしたが、だからこそ積極的に意見を交わし、学び合うことにより、一丸となれたのだと思います」。さらに柳も、「部署の違う藤田さんとも言いたいことを言い合いながら、前向きに取り組むことができました」と述懐する。未知の分野を愉しむ姿勢、本音でぶつかり合える企業風土が、彼らの原動力だったのだ。

会社と金融業界を変革する存在に。

ネット商品ならではの安さ・便利さに、auユーザー向けの特典や安心のコールセンター対応がプラスされた『auのほけん・ローン』は、2016年4月5日に取り扱い開始となったが、金融ビジネス統括部の藤田・田中にとって、この日はあくまでも通過点。二人は以後もUXの改善などに取り組みながら、申込数や収益の伸張を図ってきた。そして今も、お客さまのためになる金融商品の拡充やサービスのグレードアップ、auショップにおける対面での販売・サポート実現など、次なる施策の推進に余念がない。
「金融業界は規制も多く、固定観念に縛られている面がありますが、それを壊していけるのはKDDIのように新しいことに挑む企業だと思いますので、これからも金融サービスの概念を再定義できるところまで事業を広げていきたいですね」という藤田。それ呼応し、田中のほうも「金融事業を真の意味で成就させられるよう、我々も上層部への進言をし続けて、会社のさらなる変革を促していかなければ」と意欲を見せる。
KDDIの金融事業は、ほけん・ローンの提供に限らない。関係会社の支援などにも傾注しつつ、グループ全体の金融ビジネス拡大へ。藤田・田中たち中途入社者たちの脳裏には、10年、20年先を見据えた壮大な青写真が描かれている。
(2017年4月取材)