現場で培ったモノづくりのベースを携え設計に

「モノづくりに携わる技術者」という自分自身が目指す姿を実現できる場所であるかどうか。そういった観点で企業選びを行っていました。京セラは材料から機器、部品まで幅広い製品ラインナップを誇り、多様なプロフェッショナルが揃う刺激的な環境であること、そして、売上高の半分以上が海外市場向けであることなどグローバルに通用するモノづくりに関われる点に惹かれました。技術者として大きく飛躍できる確信を持てたことが入社を決断する決め手になったと思います。入社後は、まずは国内の事業部でモノづくりの基礎を学びたいという思いもあり、通信端末の高速化の鍵を握るSAWデバイスに携わり、評価技術や商品技術といった製造現場に近い業務で経験を積んでいきました。その中で「培った経験を活かしてSAWデバイスの設計に一から携わりたい」という気持ちが沸き上がってきました。上司にも希望を伝え、入社4年目に念願叶って中央研究所へ異動することになりました。

予想以上に開かれたワークスタイル、廻って来た大チャンス

異動するまでは、研究や設計といった職種に対してどちらかと言えば閉じているイメージを持っていました。部屋の片隅でひとり黙々と作業しているようなイメージです。しかし、SAWデバイスは圧電部品でありながら高周波回路部品でもあるという相反する要素を持つため、各分野の専門家との連携が不可欠。設計としてその特性全てを理解した上で評価やプロセスのメンバーと協業し、目の前の課題を解いていくことが必要でした。京セラ社員はひと言で言えば真面目で愚直。とはいえ、堅いというわけでなく何でも気さくに話せる人間性とお互いをサポートし合う献身性を兼ね備えているので、想像以上にオープンな働き方が実現していますし楽しいですね。他チームの会議に自由に参加できるという文化もあり、技術の交流は盛んだと思います。そして、設計に携わって3年目に大きな転機が訪れました。「意欲があれば何でもやらせてくれる」という技術者にとってのメリットを、思っていた以上のスピード感で実感する機会に恵まれたのです。

「次世代のSAWフィルタ設計・開発はお前に任せた」

もともとは携帯電話用の部品、デュプレクサ Band25というSAWデバイスの開発にサポートで関わったことがきっかけでした。デュプレクサ Band25は世界中の名だたるIT企業からその特性を高く評価されている京セラの自信作。非常に困難を極めたその開発エピソードを創立記念式典で発表することになったのですが、時を同じくして北米市場の通過帯域Band25+66に対応し、4G-LTEとキャリアアグリゲーションの組み合わせで通信高速化を可能にする新たなSAWデバイス(クアッドプレクサ)の開発ニーズが高まっているという情報をキャッチアップしていました。当時の技術では実現は難しい高レベルな開発と言われていましたが、スピーチの最後に「ゆくゆくは自分の手でBand25+66に対応したSAWフィルタを設計したい」と半ば所信表明のような形でお話をしました。すると、さほど時を経ずして正式テーマとして立ち上げが決定し、主担当として設計に携わることになりました。

乗り越えた苦労、手にした自信をさらなる成長エンジンに

あまりに急な展開にただ驚くしかありませんでしたが、やるしかありません。試作を重ね、工場に出向いて課題をキャッチアップし、評価分析を繰り返した1年間は自分自身の技術レベルも含め「無理かもしれない」とへこたれることも幾度となくありました。ただ、自分から手を挙げてモノにしたチャンスだけに絶対に成果を出したいという一念でひとつずつ壁を乗り越えていきました。現在は開発も無事完了し、2018年10月より全世界へ向け、量産出荷を開始しました。来るべき5Gに向け、更なる高性能・高機能化のご要望を多くのお客様よりいただいておりますので、ひと息つく暇はありません(笑)。究極的に目指すのは、京セラのフィルタ技術なくしてその通信方式は実現できないという世界を築き上げること。「自分のキャリアは自分で作っていける」ことを身をもって知った今回の取り組みによって得た自信を武器に、事業を牽引する技術者として着実に進歩していきたいです。