- Top>
- プロジェクトストーリー >
- 若手社員座談会

若手エンジニアを最先端のプロジェクトに参加させ、飛行機づくりの面白さと難しさを体感させながら成長を後押しする。これがSUBARU・航空宇宙カンパニーの人材育成の伝統だ。実際、どうなのか? JAXAのD-SEND#2プロジェクトに参画。スウェーデンでの飛行実証実験も体験した3人に、感じたままを語ってもらった。
01
入社後すぐから、仕事を任されるSUBARUの風土。

北 : 私は入社して2年ほど、パイロット訓練用のフライトシミュレータのソフトウェア開発に取り組みました。まだ何も分からないのに、重要な部位を任されたので、苦労の連続でした。でもベテランの先輩や社内パイロットに鍛えられて、最後は自信を持てる製品ができました。この時の経験が私の技術者としての下地になったと思います。
高 橋 : 僕は制御設計のグループで、やはり最初に2年ほど、航空機の運動全般のシミュレータ開発を命じられました。大変でしたが、飛行機の動きや機器に関する理解が深まって、勉強になりました。若手をいきなり難しいところに放り込んで、チャレンジしてみろというのが、当社のやり方なのだと思います。
板 橋 : その通りです。私も入社後3年間、防衛省向けの無人機の開発チームで、実機を使った試験に携わりました。『そんな大きいこと、私に任せちゃっていいの』と感じる時もありますが、相談に行けば教えてもらえます。先輩や上司がバックアップしてくださるので、思い切り挑戦できるし、早く成長できると感謝しています。そうそう、私たち3人がD-SEND#2にアサインされたのも、やってみなさいの典型です。
02
プロジェクトで果たした役割は。

北 : 私たちが参加したD-SEND#2とは次世代型の超音速旅客機実現を目指して、JAXAが推進してきたプロジェクトです。ソニックブームの発生を抑えた「静かな超音速機」のテスト機をつくり、飛行実証実験を行って、データを収集・解析。ICAO(国際民間航空機関)に報告し国際基準策定に貢献しようというものです。私は電装設計チームで、JAXAのエンジニアと連携しながら、機体に搭載する制御システムと地上で飛行を支援する管制システム、両方のソフトウェア設計を担当しました。
板 橋 : SUBARUはプライムメーカー(主契約者)として、機体設計とスウェーデンの実験場での試験実施を中心にJAXAをサポートしました。北さんと私は、D-SEND#2の初期から参加し、2013年から3年連続で夏のスウェーデンに各2カ月ほど出張。私は日本では主に信頼性・安全性設計を、スウェーデンでの実験場では地上管制チームのリーダとして、組立試験の統括や現地機関との技術調整を手がけました。
高 橋 : 私は2015年夏に行われた3回目の試験から参加しました。入社3年目に入ったばかりで、突然『行ってこい』と言われて、右も左も分からずにスウェーデンに、といった感じです。飛行試験も海外出張も初めてなのに、それが北欧の夏の白夜の世界(笑)。私はデータ解析作業をメインにサポートしていきました。期待と不安と緊張感のなか新しいことの連続で、毎日が充実していました。
03
白夜の空で、学んだこと。

板 橋 : 1回目は、日本で想像をふくらませて想定して準備して現地に飛びましたが、本当のところは行ってみないと分からなくて、結果も思わしくなくて…。2回目は、その経験を活かして準備万端整えたのに、天候の問題で飛ばせなくて…。正直、たくさん失敗しましたし、苦い思い、口惜しい思いも多かったですね。だからこそ、二度と同じ失敗は繰り返さないと自分に言い聞かせて、気をつけるし、勉強するようになりました。もうひとつ、私が所属している航空機設計部は、専門の各部署を取りまとめながら、飛行機づくりをドライブする役割を担っています。今回、D-SEND#2に参加して、当社のエンジニアはもちろん、JAXAのエキスパートや現地スタッフの方がたと協同した経験を通じ、目標に向かってプロジェクトを進めるうえで大切な、チーム全員の話をしっかり聞いてコーディネートする調整能力を培えたとうれしく思っています。
北 : 機体が使い切りで、1回しか飛ばせないため、スウェーデンでの試験はぶっつけ本番。いくら日本で飛行環境を模擬していても、本番ではなかなかその通りにはいきません。1回目は、現地作業も含めてすべて初めてだったので、飛行前の準備段階からひとつトラブルを解決すると、また新しい問題が出てくる、といったような日々。結果として飛行に失敗したのは残念でしたが、実際に飛ばしてはじめて得られた知見も多く、意義は大きかったと思います。だからこそ、徹底的に原因を究明して対策を講じ、2回目では気象条件がそぐわず水を差されはしたものの、3回目の正念場で成功を勝ち取れたのです。メンバー全員、最高の達成感を味わいました。何より3年間、毎年夏の数カ月をスウェーデンでの飛行実験で過ごしたのは、またとない貴重な体験でした。個人的には、ソフトウェア開発は、想像力をフルに駆使して検証しなければいけない。少しでも詰めが甘いと、肝心な場面でトラブルが起きると身をもって経験できたのが収穫でした。数段レベルアップできたと感じています。
高 橋 : データ解析は、機体が飛行して得られたデータとシミュレータの予測データを比較して、違っているところがあったら、なぜなのかを突き止める作業です。初めて飛行した後の実データを解析したので、経験がなくて大変でしたが、とてもいい勉強になりました。それまで2年ほどシミュレータの仕事をしてきたこともあって、先輩に教わりながら実データと比較していくなかで、シミュレーションの問題点を、自分の力で見つけられるようになりました。それと、実験場はスウェーデンの奥地で、品ぞろえのあるスーパーまでは車で1時間もかかります。毎週、土曜に買い出しに行って、週日はみんなで自炊をして…白夜の大自然のなか、20代から40代の20名ほどのメンバーが合宿生活といった感じで楽しかったですね。
04
「SUBARUは航空機がすごい」と言われたい。

高 橋 : スウェーデン滞在中に残念ながら、オーロラは見られませんでしたが、休日に山に登ったり、釣りに行ったり、アウトドアライフを満喫しました。板橋さんの発案でつくった、お揃いのTシャツも、いい記念です。オンとオフのめりはりをつけて、仕事でも遊びでもチームワークがいいのが、当社の風土なのだと実感しました。
板 橋 : いま私は、新しい無人機を開発するプロジェクトに参加しています。自動化、ロボット化は世の中の流れでしょう。無人機という飛行するロボットを手がけているメーカーは少ないうえ、当社には長年の知識・技術・ノウハウの蓄積があるので、大きなチャンスがあると信じています。
北 : 航空宇宙カンパニーでは、いろいろな仕事を経験でき、自然に知識の幅が広がっていきます。そのうえで、イチから自分たちの手で、新しい航空機を創り出せる恵まれた環境です。『SUBARUと言えばクルマ』だけじゃなくて、『SUBARUは航空機がすごい』と言われたいですね。そういう航空宇宙カンパニーをつくっていくのが、私たちのミッションだと思っています。
※ 役職・記事内容等は、取材当時のものです。