東芝メモリにはデジタルプロセスイノベーションセンターという、半導体製造とビッグデータやAI、機械学習などの知見を組み合わせて、最先端の技術分野を研究している部署がある。それらの知見を持つ技術者が、半導体生産というモノづくりの現場にかかわる魅力とは?どのような人材と一緒に未来を創っていきたいのか?当センターのビジョンや実現できること、キャリア入社者に寄せる期待を、センター長と副センター長の二名に聞いた。

デジタルプロセスイノベーションセンター センター長

久保 哲也

1990年新卒で東芝に入社。学生時代は精密工学を専攻し、ロボット制御やモータの振動解析等の自動制御を研究。入社後は生産技術研究所に配属され、半導体生産設備の開発を担当。その後、工場の生産システム構築を経験し、2004年頃より四日市工場での大規模クリーンルーム立ち上げに伴い、半導体生産に再び関わり、2007年に東芝のセミコンダクター社に異動。半導体の営業、マーケティング、調達の情報共有の仕組み構築ほか、ビッグデータの活用や分析ツールの投入などITに関する仕事を経験した。その後、東芝メモリに転籍。デジタル技術を用いた生産技術全般をけん引し続けている。

デジタルプロセスイノベーションセンター 副センター長

伊藤 剛

1993年新卒で東芝に入社。学生時代は応用物理学を専攻。計測工学によるディスプレイの研究に興味を持ち、入社後は研究開発センターに配属。液晶TV、3D-TVの映像技術、画像認識技術の研究に従事したのち、AIの研究に携わる。東芝でのAI研究の第一任者として、2017年頃より久保センター長とともにプロジェクトを推進し、オープンフィールドに関するワーキンググループのリーダーとなる。2018年に副センター長として東芝メモリに転籍。

モノづくりの現場から、まだ見ない最先端技術を生み出せる場所。

――デジタルプロセスイノベーションセンターとはどのような役割をもつ組織なのですか。

久保「業務プロセスのデジタル化による当社工場生産性の向上をミッションにしています。当社の生産拠点である、四日市工場を例にとると、AIやIoTなどの最先端技術を導入した自立判断型の工場であるスマートファクトリーや、工場をデジタル空間で再現するデジタル工場、蓄積したビッグデータを活用するためのオープンイノベーションなどを研究しています。」

伊藤「当センターには現在約40名の技術者が在籍しており、(1)デジタルプロセス企画担当、(2)先行研究担当、(3)推進担当の主に3グループで構成されています。1つ目のデジタルプロセス企画は研究のロードマップ作成、予算策定、産学連携やコンサルタントとの契約などを担当。2つ目の先行研究はAIロジック、プラットフォーム、開発手法、ビックデータ分析基盤などの先端技術をどのように活用すべきかを研究しています。3つ目の推進担当はそういった技術を、実際の工場にどのような形で適用していくのかという応用研究を行っています。」

久保「私自身、四日市工場での勤務経験もありますが、ビッグデータやAI分野の技術者の方にとって半導体工場というのは、「最先端」のイメージはあまりないかもしれません。ところが、工場で稼働している半導体製造装置は約5,000台。そこから毎日20億件、40TBの情報が上がってきます。それらをどう分析してどう使っていくのかという基盤からつくれるうえ、データだけではなく実際の生産現場もある。なのでビッグデータやAI分野の技術者にとって、工場が最先端の製品だという新しい世界を創っていく部署だと思っています。」

可能性のある業界に飛び込んで、自らの手で変えていきたい方に。

――今回、当センターでキャリア採用を強化する背景と、中途入社の人材に期待するポイントを教えてください。

久保「元々、当センターの研究内容は東芝の研究所で実施していました。東芝メモリとして分社後、半導体専業メーカーとなりましたので、ビッグデータやAIの分野に精通している人材が不足しているのが現状。そこで、将来的に当センターの屋台骨となるような人材のキャリア採用に力を入れています。」

伊藤「ビッグデータやAIと言えば、世界的に有名なITプラットフォーマーが思い浮かぶ方が多いと思います。ただ、私が研究所にいた経験から言えるのは、モノづくりに関わりたい、という志向を持つ方には、とても面白い環境だということです。先端研究を理解して自分たちに取り込み、AIを使ってモノづくりを改善して行くことができます。モノづくりの現場は掘れば掘るほど課題が出てきますから、自ら情報を取りにいき、コツコツと突き詰めることを楽しめる環境です。」

久保「半導体業界は競争の激しい世界ですし、競合も大きい。それだけに、常に新しい技術を適用させていく必要があります。そのために難しいことにも取り組み、会社を改革改善していくという思いがぶれない方を歓迎したいですね。」

伊藤「半導体の会社だからAIなど本当に必要とされているのか、と思われる方もいるかもしれません。ただ、一般的に最先端だと思われていない企業だからこそ、既成概念にとらわれない斬新な発想でも活かせる機会があります。自分の経験や技術を、当社でどうにかして活かせないのかという想像ができる方であれば活躍できると思います。そういった技術構想を、常に考えていられるような方だときっとご活躍いただけると思いますね。」

まずはスマートファクトリーの実現に、技術とアイデアをどう使っていくか。

――キャリア採用で入社した方には、どのような仕事に携われる機会があるのでしょうか?

久保「現在、目指しているのは四日市工場を起点とした、「スマートファクトリー」の実現です。その定義とマイルストーンの策定段階からジョインいただける予定です。工場は一見するといまでも自動で稼働しているように見えますが、実際にはITと人のハイブリッド。裏では人がマスターデータをつくったり、障害が起きれば人が判断してオペレーションをしていたりします。そういった属人的な部分も含めて、AIによる完全に自律生産可能な工場。それが目指しているスマートファクトリーの形です。」

伊藤「実現するためには、なにかが起こったときに現象と原因を紐づけて解析・特定し、さらに今後起きることを予測し制御しなければならない。それがスマートファクトリーです。いまはまだ、膨大なデータを解析して見える化を行っている段階で、スマートファクトリーの実現はまだまだ初期段階。ここからジョインすれば、自身のアイデアを活用できる絶好のタイミングになると思います。」

久保「いまは工場のクリーンルーム(※半導体前工程製造ライン)をターゲットにしています。クリーンルームは一度つくると10年、20年使うことになる。そのインフラ基盤を整えプラットフォームをつくっていくことになります。世界的なITプラットフォーマーと同じようにオープンソースをどんどん取り入れて、強固なものにしていければと考えています。」

伊藤「半導体は装置産業ですが、実際の製造装置はすべてPCで制御されています。いまは属人的にシステムをつくって複雑化していますが、全体最適を見てそれらをシンプルにしていく。それを自分で開発し運用までもっていける楽しさがあると思います。」

オープンイノベーションも活用し、研究の在り方も変えていく。

――将来的に実現したい目標や世界観とはどういったものなのでしょうか。

久保「メモリは需給変化が非常に激しい。そんな環境で開発サイクルは短期化し、納期の回答や後工程を海外で担うため生産計画の修正に時間がかかってしまう。そういった状況に量産工場が対応するためにデジタル技術を使っていきたいですね。」

伊藤「モノづくりの現場は高度な知識が属人化してしまっている。その知識データベースをしっかりと構築すれば、活用できる分野や範囲は大きく広がる可能性があると思っています。当社でそれが実現できれば、半導体業界のみならず、製造業としてスケールしていくこともできるかもしれません。」

久保「半導体は数学、物理、生産技術、化学など業務で学ぶ範囲は幅広い。いまでも1日に20億件のデータがありますが、まだ取れていないアナログデータすべてをあわせれば恐らく100億件を超えるデータが取得可能なります。それを扱えるだけのインフラも整えていきたいと思ってます。そのために我々だけではなく、外部から様々な知見を取り入れていきます。そのために東京で研究できるオープンフィールドセンターのような、外部とR&Dを締結したりするための戦略的な場をつくる計画をはじめています。伊藤さんがそのリーダーです。」

伊藤「場所の予定は渋谷です。ビッグデータ、AI、機械学習、画像認識などの技術を持った人々が、仕事や授業などで一番集まりやすい場所が渋谷かなと。そこで仕事終わりの時間にセミナーやハッカソンのようなことをやって、ナレッジが行き交うようにしたいと思っています。VRやARなどの技術を使った実験をして生産技術の敷居やハードルを下げていきたい。工場の場所を聞かれて渋谷だと言えるような、研究開発の環境をつくってきたいですね。」

トップを含めて新しい技術が好きな文化があり、高い柔軟性や自由度で働ける。

――最後に転職を考えている方へのメッセージをお願いします。

久保「経営陣には新しい技術への理解があり、ビッグデータやAIといった分野への投資も積極的な姿勢で受け入れてくれます。また、それを活用して現場を変える難易度が高いという認識もありますから、まずは課題に真摯に向き合うことが評価される環境です。加えて、次にどうするのかをしっかり見てくれますから、提案したことや考えついたことを実行して事業に活かしていくことができる。正解はありませんから、きちんと製品がつくれれば、比較的自由に進めることができるのは当社の魅力だと思います。その代わり、半導体生産のために何千人が使う決して止まってはいけないものを開発するので、堅牢で信頼性の高いものをつくらなければなりません。その結果として自らの技術が、数千名が働く工場の生産や、工場から生み出された最先端メモリを使う世界中のお客様に役立っていることを実感できる仕事です。」

伊藤「転籍者として、当センターにきてよかったと思うことは、人・モノ・金がすべて揃っている環境でビッグデータやAIの研究に携われるということです。産学連携など一緒にやりたいという人や団体も数多くあります。例えば、AI系の学会での発表数が多い複数の大学と、共同プロジェクトを進めています。自分たちの殻にこもるのではなく、こうした外部の方々と知見を交わし、より高いレベルで技術を究めたいという方とぜひ一緒に働きたいですね。」

特別コーナー:センター長、副センター長のスケジュール例

久保「曜日毎になにをするのかを決めて、1週間のスケジュールを組んでいます」

●1週間のスケジュール例

内部、IT部門との情報共有。採用、リーダー会、パートナーさんの進捗確認など。
経営会議、プロジェクト会議、研究テーマ提案会議に出席。
日帰りで四日市工場へ。作業着に着替えて現場への技術フォローなどを行い、課題などをヒアリング
プロジェクトの進捗を確認。大学・先端IT企業との交流も実施。
1週間の振り返り。次週のアクションを確認。

伊藤「外部の人間との打ち合わせも多く、社外に出ていることも多いですね」

●ある1日のスケジュール例

午前
内部の会議での情報共有。
午後
社外にてコンサルタントや産学連携に関する打ち合わせ。

※四日市の工場にも2週間に一度程度の割合で訪れている。

募集職種一覧を見る